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ジョリヴェのTp.協奏曲二番について / 運指練習に関する覚書

トランペットについての話題。

最近ジョリヴェのTp.協奏曲二番をさらっている。これも先日も書いたおさらい会で本番にかける予定。

ジョリヴェのTp.協奏曲二番について

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私はこの作品が(現代楽器のための)トランペット協奏曲というジャンルの中で最高の作品だと思っている(ちなみに、私が演奏とか作品について「最高」と言う時は、聴いている時に最高な気分になるというのが正確なところで、原義通りの「一番」という意味ではない)。
「現代楽器の」という括りは重要で、バッハのブランデンブルク協奏曲二番やハイドンの協奏曲は素晴らしい作品だけれども、あれらは現代のヴァルブ機構を備えたモダン楽器のために書かれた作品ではない。現代の楽器とナチュラル管や有鍵トランペットとの間で単純に優れている劣っているだのと言うのは愚かしいけれども、広い音域に渡って半音階を自由自在に均質な音域で操ることが可能であるという意味では現代の楽器に軍配が上がる。そういった楽器の可能性を十分に引き出して作品を書いたという意味で、ジョリヴェのこの作品には独特の魅力がある。ミュートまで駆使していていろんな音が鳴るし、ジャズのフレーバーがまぶされているのもそうだし、打楽器のけたたましい騒音に対抗してのおどろおどろしい音響からポップな楽しい音楽や穏やかな響きに一瞬で行き来できるのはこの楽器ならではだろう。

この作品に取り組む

まずは楽譜を買う

という風に大好きな作品なので、吹いてみたいということはかなり前から思っていた。しかしまず楽譜が高い。8000円くらいする。演奏する訳でも無いのにこの額のものを買うのは酔狂だと思う。しかしそこに、友人がおさらい会というのを始めた。トランペットもいつまで続けるかわからないので、曲がりなりにもやりたいものはやってしまった方が死ぬ時に気分が良さそうだ。ヒンデミットソナタハイドンの協奏曲とやってみて、大した演奏も出来なかったが手応えもあった。しかし一方でソロ曲を吹ける状態を保つ大変さも感じた。いま勢いでやっちまうのが一番まともに演奏できる可能性が高い気がする。いいや、とりあえず楽譜買っちゃえ。何のために給料もらってるんだ。

とりあえず吹いてみる

楽譜を見るまでもなくわかることだが、この作品は私からするととても難しい。耐久力が要求されるし、音域は広いし、跳躍が多いし、音程も取りづらい。
ひとまずは「この長さの曲を吹けるか」を判断しようと考えて、とりあえず細かいところは適当にしつつ、通して吹いてみた。うーんまぁ、しんどいけど最後までいけた。打率はともかく、後半まで行っても高音域も当たる。ヒンデミットとか頑張って吹いたお蔭かな。本番かけれるかもなあ。かけよう。伴奏してくれる人を探したところ無事見つかった。ヘボな割に周囲の人には恵まれているなと思う。
とにかく、ちゃんとさらい始める。

しかし問題は運指かなと

トランペットと言うのは運指が合っていても間違った音が出る楽器だし、他の楽器ほど機動性に期待されていないので、トランペット奏者というのは運指がおろそかになりがちである。いや、自分がそうなだけか。とりあえず自分はそうだ。それでもまあ、ちょっと難しいなと思った作品は楽器を持っていない時も重点的に指をさらいまくったらある程度対応できて来たものだ。いや出来てなかったこともあったが誤魔化してきた。
しかし今回は本当にシャレにならない。何と言ったってソロだ。私が主役だ。そしてピアノと二人きりだ。しかし、いつものように電車の中で楽譜を眺めて指を動かしているものの、上達のスピードは遅々としている。なので、効果の出る運指練習について(今更、ようやく)本腰を入れて考えてみた。

どうしてこの曲の運指が出来ないのか

というと、今まで見たことが無い音のパターンがたくさんあるせいだ。半音階とか普通の長調短調のスケールとかアルペジオというのは楽器を始めてしばらくの頃にさらいまくるものだから、普通に続けていれば結構速く動かせるようになるものだ。普通の曲だったらそれを組み合わせていくだけだから、多少早くなってきてもまあ何とかなる。しかしジョリヴェのこの曲はそうではない。何の調かよくわからない箇所が頻発する。そうすると、もっと調性のはっきりした音楽だったらギリギリ出来るかな、くらいの早さの指が、笑えるくらい回らない。

運指の練習方法について考える

やれるものなら普通に吹いてたくさん練習したいなとは思うものの、なかなか音が出せる環境にない。仕方がないので、楽器を取り出して指だけ動かして練習してみた。一応指だけ動かしたら動くかなあと思ったものが、楽器でやってみると出来ないということは往々にしてある。しばらくやっていたところ、次のようなことに気付いた:

1. ピストンを押し切るまでの指の動きが遅い。
2. 普通に吹くよりは指だけでやった方がまだ正確に動く。吹いてしまうとやっぱり吹くための他の動作にも気を使わないといけない。

まあ当たり前と言えばそうだ。
現状ボトルネックは運指なので、指だけ集中して練習するのが先決だと判断した。

一工夫

確かクラウド・ゴードンだったか? が言ってたと記憶している方法を試してみることにした。ヴァルブのねじを軽く外してカチカチと音が鳴る状態にしてさらうというものだ。
試してみて分かったのだが、この方法の良い点は特にピストンが上がるタイミングで鋭く「カチッ」と音が鳴ることだ。そうすると、自分が思っているタイミングでピストンが戻っていないことに気付く。押さえることにどうしても気を取られがちだが、離すタイミングでも音が変わるのだし、これは問題だ。

という訳でまず、上記の状態にして、メトロノームに合わせて単に指を上げ下げするという練習をした。特にピストンが上がる時の「カチッ」という音が正確なタイミングになるように気を使う。次に、二本の指を同時に上げ下げ。
それが出来たら三本。

いやいや、こんなのですらちゃんと出来ていなかった。何年楽器やってたんだかと。まず基本的な動作が鈍いから、これだと難しいことが出来ないのは必然である。

それにある程度納得がいったら二、三本の指が互い違いに上下するようなパターン。片方の指が上がる時の音ともう片方の指が下がる時の音がばっちり合うように気配りする。じゃないと綺麗に音がつながらないだろう。鋭くカチーンと音を鳴らす。やってると案外楽しくなってくる。

これらが曲中の一番速い動きのテンポまで納得が行く精度で出来るようになったら、さらっている曲の運指パターンに移行する。本当ならスケールとかを同じ方法でまずやった方が良いかもしれないが、ともあれ……おっ。ちょっと前より良い感じがするぞ。

そういえば別の方法として

アダム・ラッパの書いた教本だったか、左手でも練習すると右手の運指が良くなる、といったことが書かれていた。
うーん、本当かな。それだったら両手を使う楽器の人は相乗効果で際限なく運指が出来るようになる気がするが。でも確かに、右手だと何となーくで済ませていたことが左手だと意識しないと出来ないので、脳みそに新たな刺激が行っているという気もする。そういえばソルフェージュのリズム系の課題は両手を入れ替えてやらされるなと言うことと結びついた。


とりあえずはこういう感じでやっていこう。

しかし、まだまだ目標のテンポに追いつかないけど。

――本番に間に合うのか!?