電波塔

21世紀型スノッブを目指すよ!

休日トランペッターのための練習方法

学生時代に一緒に演奏してきた同世代の友人達も社会人であったり大学院生であったりになってきて、そうでなくても社会人団体にいると「練習時間が取 れないからどんどん下手になる……」とぼやく人は多い。私も週末くらいしか楽器をちゃんと吹かない日曜音楽家な訳だが、防音室のある部屋に住んでなくて も出来るようなエクササイズを色々と考えついたのでそういうものを実践するようにしている。実感としては平日はそういうエクササイズ+週末に吹くというくらいでも下手にならないし、むしろ上達できていると思う(ああもちろん、趣味として楽しむ範囲での話)から、「工夫のしようはあるはず!」と考えている。もちろんちゃんと楽器が吹けるならそれに越したことは無いけれども。

誰かの役に立てば良いなあと思いつつ、書いていってみよう(上手くならなかった!と言われても責任は取れないけれど)。

ブレスのエクササイズ
ブレスは音を生み出す原動力だからとても大事。他の管楽器はお遊びでしか触ったことがないけれども、トランペットは管楽器の中でも強い呼気が要求されるように思う。ブラス・ロックのホーン・セクションで演奏したり、ビッグバンドでリードトランペットを担当するなら特に。

普通に生活しているだけだと楽器を吹く時に要求されるような呼吸能力はどんどん鈍っていってしまう。でも呼吸能力のエクササイズは楽器を使わなくても出来る。そういったことをやっていれば、一週間楽器を触らなかったとしても楽器を吹く時に息の入りがさほどおかしくはならない。それどころか、人によってはただぼんやり楽器を吹くよりも奏法にいい影響を及ぼすかもしれない。私の師匠はブレスを鍛えることの重要性を強く説いていて、レッスンではほとんど楽器を持たずにブレスのエクササイズをさせているくらいだったけれども、結果的に随分と私の吹き方は良くなったように思う。
さて、重要だと書いておいて何だが、呼吸エクササイズについてはここによくまとまっているものがあるので丸投げする。エリック宮城氏が「ブラステクニックガイド」で触れていた本。英語だけど。でもタダでネットで読めるのだから素晴らしい時代である。

ヨガ行者が実践する呼吸が如何に優れているかについてたくさんの御託有り難いお言葉が書かれているけれども、ヨガマスターではなくトランペットマスターを目指す人々にとって有り難いことが書かれているのはVII・VIII・ XI章辺り。XI章にある Walking Exercise なんかはクラウド・ゴードン門下のメニューに入っていたものだと記憶している。このメニューは通勤・通学途中に多少なりとも歩くならば出来る。

小さいアパチュアを作る練習
トランペットを演奏する時には唇の開き具合、つまりアパチュアが細かく調節されている。この調節には唇周辺のいろいろな筋肉が動員されるが、ぼんやりしているとやはりこの調節能力が衰えてしまう。

そこで、「調節」と言うには少し単純だけれども、可能な限り小さなアパチュアを作る、ということを練習する。目指すところとしては空気で出来た糸が口から出て行くような感覚。高音域の拡張/維持に役立つ。

ある程度小さなアパチュアを維持したまま息の流量をいろいろに変えていくというのも良い。アパチュアは口の周りの筋肉と息の流れが拮抗して出来るから、息の流量を変えながらアパチュアのサイズを維持するには唇周りの筋肉の微妙な力加減が必要になる。

唇の緊張を強くするとリップが振動するが、それは目指す必要も避ける必要も無いだろう。実際に演奏する時にはマウスピースによるプレスが加わるからだ。小さなアパチュアを作れるようになったと思ったら、楽器でしっかりプレスしつつ同じようにやってみると、とても楽ちんに(とても小さい音だけれど)高い音が出ると思う。ほそーい息であれば大した音は鳴らないから、布団くらい被せれば十分なミュートが出来る。

"p" 練習
閉じた状態の唇に息を送ると、唇が離れる瞬間に "p" という音が鳴る。「唇を閉じておく→息を送る→唇が離れる」というこの一連の動作は明瞭で正確な発音を得るためには重要。楽器なしでこの動作を実践するのも綺麗なアタックを得るための練習になる。

そんなの簡単? もちろん、ただ「プッ」というのは別に難しいことではない。でも例えば、非常に弱い息でも思ったタイミングで発音したり、強い息でも「ブプッ」とかブレないようにするのは多少の注意が必要になるはず。
そういうことを踏まえると結構高度なエクササイズが出来る、つまり「狙ったアパチュアの大きさで、狙った息の流量で、狙ったタイミングで」唇が離れて息の通り道が生じるようにする。さらにタンギングも付けて、ちゃんと反応するか試してみたり(舌に意識が行くと他の部分に妙な力が入ったりするかもしれない)。
「狙ったとおりに出来る」というのが重要で、そうすると楽器を持った時に出る音と体の動きを結びつけていくのが容易になる。実際に楽器を持った時にアパチュアの 大きさや息の流量に対する出る音の関係をよく覚えておけば、楽器なしでも体の状態をうまく「エミュレート」出来るようになるはず。

 

まだあるけれど今日はこれくらいで。

これらのエクササイズは自分の経験や教わったことや教本などを自分なりに消化したもの――というと聴こえは良いが、いろいろパクってごちゃ混ぜにしただけとも言える。効果を感じたのは確かだけれども、こうした内容を元に他人にレッスンをつけたりした訳ではないから、他の人たちにとっても効果があるのかわからない。その人のレベルというか、抱えている問題や伸ばしたい演奏スキルにもよるだろうし。

無責任な言い方になるけれど、正直に言えば効果が上がるのか興味がある。なので何らかのフィードバックがもらえると嬉しい。良い効果が上がったというお知らせならなおのこと嬉しい。